空港サインのガイドライン

空港のサインについて海外の資料を調べていて、米国の ACRP Report 52 “Wayfinding and Signing Guidelines for Airport Terminals and Landside” というガイドラインに行き当たりました。
米国Transportation Research Board(TRB)のAirport Cooperative Research Program(ACRP)が2011年に刊行したものです。
少し古い資料ですが、読んでいて興味深かったのが、
“Effective signing begins with airport layout.”
という考え方です。
空港や建築の構成そのものが利用者にとって論理的であれば、必要なサインは少なく、単純にできる。逆に複雑な空間では、それを補う案内が必要になる。
つまり、サインの計画はサインから始まらない、ということです。
道路からゲートまでを一つのシステムとして考える
Report 52が扱う範囲は、ターミナル内だけではありません。
アクセス道路、駐車場、カーブサイド・地上交通、そしてターミナル。利用者が空港に近づいてから目的地へ到達するまでを、一連のwayfindingとして扱っています。
そこで重視されるのが、
Continuity / Connectivity / Consistency
という考え方です。
途中で情報が途切れないこと。必要な場所で必要な情報が得られること。そして名称や表示方法が一貫していること。
実際の仕事でも、「ここの表示を変えてほしい」という依頼に、その一枚だけを直せばいいとは限りません。
一つ手前では何を案内しているのか。変更した先ではどう続くのか。別ルートから来る人にはどう見えるのか。
一枚のサインではなく、情報の連続として考える。
Report 52では、こうした考え方がwayfindingの基本戦略として整理されています。
Wayfindingは「建物の設備」
もう一つ面白かったのが、wayfinding systemを、空調、通信、電気などと同じbuilding systemとして扱うという考え方です。
空港では航空会社や店舗が変わり、施設が増改築され、旅客動線も変化します。
ならばサインも、完成時にデザインして終わる「表示物」ではなく、変化し続ける空港の情報を利用者へ伝える、継続的に運用するシステムと考えた方が実態に近いのかもしれません。
では、日本では?
もちろん日本にも、公共交通施設の案内サインやピクトグラム、アクセシビリティなどの基準がありますし、各空港でも専門家によって詳細な設計基準がつくられています。
気になるのは、
空港計画 → 旅客動線 → wayfinding → 情報体系 → サイン
という一連の関係を、日本ではどのように設計・運用しているのか、ということです。
Report 52は2011年の資料なので、その後のデジタル化などを含めて読む必要もあります。
それでも、
空港のサインを考えることは、案内板をデザインすることだけではない。
人が空港という複雑な場所を、どう理解して移動するのかを設計すること。
その基本を改めて考えるには、今読んでもなかなか面白い資料です。




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